トーク力の高い人達も、最初から魅力的で人を引き付ける話し方が上手だったわけではありません。
彼等だって最初はトーク力の高い人の話し方を真似したり、観察したりして魅力的な話し方のコツを習得していったのです。
ビジネス本に書いてあるように「とりあえず人を褒める」なんて事ではありません。
トーク力を鍛えるための簡単なコツと、失敗例をご紹介します。
トーク力を鍛える目的
社会に出たら誰もがもっとトーク力を鍛えて、自分を印象づける魅力的な話し方を身に着けたいと思うはずです。
トーク力というのは、立て板に水のようにしゃべったり笑いを取ることではないし、むやみに人を褒めることでもありません。
トーク力を鍛える目的はこの3点です。
- 自分の考えや感情を相手に正しく伝える
- 相手から知りたい情報(言葉)を引き出す
- 相手から信頼(好意)を得る
ビジネスや恋愛、社交など目的は違っても、基本はこの3点です。
トーク力の高い人の特徴
トーク力の高い人達は、最初から天性の魅力やカリスマ性があったわけではありません。
彼等だって最初は、トーク力の高い人達を研究して真似するところから始めたはずです。
トークの上手な人達の特徴をまとめてみました。
- 話が整理されていてわかりやすい
- 結論(オチ)が用意されている
- 相手が言って欲しいであろう言葉を的確に伝える
- 話題が豊富
話を整理する
トーク力が低い人・話が下手な人の特徴は、話にまとまりがないことです。
言いたいこと、伝えたいことが沢山あるのに、結局話が長いだけで相手を退屈させてしまうのです。
話が前後したり、話がそれたまま本筋とは違うことを延々と話してしまったりすることも多いようです。
気を付けるべき点はコチラです。
①優先順位を決める
②相手の反応を確認する
③言いたいことを取捨選択する
優先順位をつける
トーク力の低い人は、自分の話したいことを最初から最後まで全部、話そうとしています。
一番伝えたい事は何なのか、自分で整理してから話すとトーク力が上がります。
最初に一番重要なこと、伝えたいことを1つだけ話すようにしてみてください。
例えば、お気に入りの映画について人に説明したい時。
トーク力の低い人は、映画の最初から・・・主人公たちの出会いやその時のセリフなど、どうでもいい事から話してしまいます。
自分にとっては、どのシーンもお気に入りなので取捨選択ができなくなっているのでしょう。
その結果、話が前後したり自分でも混乱して、長いだけの説明になってしまいます。
長々と映画のストーリーや名場面、主人公の登場シーンなどを説明するより
「トム・クルーズめっちゃかっこいいから見て!」
と一言だけの方がよほど、相手の心に響く効果的な伝え方です。
一番伝えたい事は「トム・クルーズがかっこよかった」これだけです。
このように「伝えたい事を1つにしぼる」くせをつけておくと、自分の考えや気持ちを効果的に伝えることができます。
反応を見る
一番大事な事を伝えたら、次に相手の反応をみます。
相手が興味なさそうだったり、他の話題にうつりたそうだったらそこで引きましょう。
トーク力の低い人は、自分が話したいことを最後まで話してしまう場合が多いのです。
相手は他の話題にうつりたいのに、仕方なく聞いているといった状況です。
トーク力の高い人達は、話しながら相手の反応をちゃんと見ています。
「この人退屈してるな。ちょっと話が長すぎたかな、話題を変えよう」
「右端の人はさっきから全然しゃべってないな。何か話題をふってみよう」
など。
取捨選択する
昔、ナンシー関がエッセイで、
「M岡修三は何を言うべきかがわからない馬〇で、N嶋一茂は何を言ってはいけないかがわからない馬〇だ」
と書いているのを読んで、その鋭さに感動したことがあります。
お二人とも今ではトーク力を鍛えて立派にコメントなさっていますが、若い頃はむやみに興奮したり天然ぶりを発揮したりして、心配で見ていられないこともあったようです。
「何を話すか」
「何を言ってはいけないか」
この2点は人と話す時、常に念頭に置いておかなければならない事です。
話したい事に優先順位をつけておくと、話すべき事と省略できる事が整理できます。
これが苦手な人は、映画やドラマ、小説、漫画、新聞記事など何でもいいので、粗筋をまとめる練習をしておくと役立ちます。
結論(オチ)を用意する
特に関西ではオチのない話は嫌われます。
オチ=笑いをとるという意味ではありません。
結局、何が言いたいのか、何を伝えたかったのか意図がわからない場合(オチのない話をされた時)関西人は冷たく応じることで相手に反省を促します。
ダラダラと話終えた時、たいていこう返されるはずです。
「それで?」
「だから?」
ビジネスの場では、最初に結論を言うことが大事です。
その後で、根拠や理由を説明します。
失敗例
ビジネス本に書かれている事が全て正しいとは限りません。
私は人と話している時、ビジネス本で読んだ通りを実践してくるのが面倒くさくてイラッとしたことが何回かあります。
その人物が読んだビジネス本にはたぶん、こんな事が書かれていたのでしょう。
- 相手と何かの問題点について話す
- その次に自分は解決先を知っているとほのめかす
- 相手が知りたがったら、少しじらしておいてすぐには答えない
- 相手は「知りたい、教えて」と言ってくる
- じらしてから教えると、相手の関心や注目をひくことができる
- 自分から「教えてほしい」と頼むことによって、相手はあなたを博識な人物だと思ってくれる。
その人物は「その答えを僕は知ってるんだけど。知りたい?ホントに知りたい?」
「いや、やっぱりやめておくよ。最後まで聞く気がないかもしれないし。僕もホントの意味で理解できるまでに時間がかかったから。でも、とてもためになるし人生において役立つことなんだよね。ホントに知りたいと思う?うーんどうしようかな」
とグダグダ言いかけては止め、また言いかける・・・というじらし作戦を始めました。
私がどう思ったかは書きませんが、「あ、じゃあいいです」とだけ返しておきました。
それまでじらしていた人物は
「えっ、でもすごくためになる話だから。必要ないっていうんなら僕は別にいいけど。損すると思うよ。教えてあげたかったんだけどね。ホントに知りたくない?」
と言っていました。
彼はきっと普通のトーク力だったのに、上級テクニックが必要な話術に挑戦してしまったのでしょう。
「相手をじらして関心を自分に向けさせる」なんて、かなりのテクニックと頭の良さが必要です。
最初から「それについては、〇〇が効果的らしいよ。僕も人から聞いてなるほど~って思ったんだけどね」
とでも言っていけば、彼は皆からもっと好感をもたれていたはずです。
相手が言って欲しい言葉
特に恋愛においては、相手に何を伝えるか、どう伝えるかは重要です。
例えば、レストランに行った時
「とっても美味しい」
だけでは、本当に伝えたいことは言えていませんよね。
もっと伝えたい言葉があるはずです。
伝えるべきなのは
- あなたと一緒だから、より一層美味しいと思う
- 素敵なお店に連れてきてくれてありがとう
ってことですよね。
「美味しい」だけだと「私、イタリアン大好き」とか「このお店気に入ったわ」くらいにしか伝わっていないかもしれません。
初デートでこれだけだと、相手の印象に残りません。
恋愛中の相手だけでなく仲良くなりたい人に対しても、
「相手は何を言って欲しいか」
「自分は何を伝えたいのか」
キチンと言葉にして伝える努力は必要です。
自分が相手に言って欲しい言葉があるのなら、相手が言って欲しい言葉を先に言わなければいけません。
例えば「今日は楽しかったです。ありがとうございました。」
これだけでは「こちらこそありがとう。また今度ね」で終わってしまうかもしれません。
相手が多忙な方だった場合、次の週にはあなたの名前は忘れられている可能性だってあります。
「今日は面白いお話がいっぱい聞けて、ホントに楽しかったです。ありがとうございました。実は今日〇〇さんとお会いできるのとっても楽しみにしてたんです。〇〇さんのお若い頃のお話を聞かせていただけたおかげで、励みになりました。時間がアッという間にすぎてしまって・・・またぜひ、先ほどのお話の続きを聞かせてください。」
これらの言葉は〇〇さんが、言って欲しい言葉であるはずです。
- あなたの話はとても面白かった
- あなたとの時間は有意義で楽しかった
- あなたに会えるのを楽しみにしていた
- あなたの話はためになった(具体例もあげている)
- また話の続きを聞きたい
きっと「またぜひお会いしましょう」と言ってくれるはずです。
「また会いましょう」が社交辞令であったとしても、あなたの名前と顔は覚えてくれるでしょうし、良い印象を持ってくれます。
話題作り
自分の好きなことだけ、興味のある事だけでは会話は続きません。
あまり興味がなくても、一般常識として知っておくべきことはいっぱいあります。
銀座の売れっ子ホステスさんは、日経新聞を隅から隅まで読むそうです。
社会、芸能、地方の出来事、政治、経済、芸術など幅広い知識があれば、どんな相手とも楽しい会話ができるはずです。
たとえ浅い知識であっても、自分の話を披露するのではなく相手の話を引き出せばいいのです。
「わかりません」「知りません」「聞いたことないです」だと、これ以上会話ができません。
トーク力というのは自分が話すだけでなく、相手から話を引き出す技術でもあります。
誉め言葉のまちがい
多くのビジネス書や自己啓発本には、「人を褒めろ」と書いてあります。
私の知人で何十万もの入会金を払って、ある経営塾に入った人がいます。
その方は真面目な性格なので、その塾長の講義をちゃんとノートにとっていました。
それを見せてもらって驚いたのは、何十万も払った講義の内容が「褒めろ」の一言ですむ話だったことです。
「毎日人を褒めましょう。朝、起きたら奥さんをほめてあげてください。今日もきれいだね、そう言われて嬉しくない女性はいないんです。奥さんは嬉しくて小言だって減るし、家庭がうまくいくものなんです。会社に行ったら部下もほめてください。君はいつもオシャレだね、いいネクタイだね、その髪型にあってるね、なんでもいいから、とにかくほめてください。ほめられた部下は嬉しいですよね。この社長のために仕事を頑張ろうって思うわけです。」
といった内容を延々としゃべっているだけ。
先ず、「褒めるといいよ」っていうのは、多くの本に書かれすぎていて皆が知っています。
私なら「あーなんか本読んだんだな」とか「研修で習ったのかな」と思います。
もちろん「お気遣いありがとう」とは思いますが、別にそれほど喜んだりはしません。
相手が髪型を変えたり、いつもよりオシャレをしていた時に限っては「キレイ」「かわいい」「オシャレだね」「センスがいいね」が有効な時もあります。
ダイエットに成功した時にも。
でも毎朝突然、古女房に「きれいだね」なんて言い始めたら、浮気を疑われるのがおちです。
それに、女性社員の容姿について感想を述べるのはセクハラ。
ビジネス本や自己啓発本の通りに褒められても、「社長のために頑張ろう」なんて都合よく思ってはくれません。
その経営塾が推奨する褒め方は、ホントに底が浅くてうんざりするものでした。
塾長本人にボキャブラリーがないため、他人の容姿しか褒める言葉が出てこないようなのです。
「奥さんなんて単純だから、きれいだねって言っとけば喜ぶよ」ともとれちゃいます。
そんな見え透いたお世辞より、お料理や掃除の行き届いた部屋、アイロンのかかったワイシャツなどに「ありがとう」とか「美味しかった」と感謝の気持ちを伝えれば奥さんだって「嬉しくて小言が減る」かもしれません。
褒めるのなら、相手が落ち込んでいる時とか、いつもよりいい成績を上げた時など、タイミングと言葉を選ばなければ、相手に気持ちは通じません。
裏方で目立たない仕事をしている社員に、自分がちゃんと見ていることを知らせるのも経営者にとって大事なことです。
確かに「何かを褒める」こと自体は、重要です。
誉め言葉は周囲を明るくするし、ポジティブな言葉は運気を上げてくれます。
人でなくても、物やお店、最近読んだ本や映画などを、雑談のついでに褒める方が簡単で効果的です。
例えば「最近できたお蕎麦屋さん、美味しかったよ、今度行くといいよ。」とか
「あの映画見た?とっても面白かったよ」など。
ポジティブな言葉と役に立つ情報を伝えるのです。
やってはいけないこと
半端にトーク力がある人は「もっと話を面白くしたい」というスケベ心がわいてくるかもしれません。
でも、ここでやってはいけないことがあります。
- 人をいじる
- 自分に酔ってしまう
- 高度な技
これをやってしまうと、その場では皆(大人なので)流したり笑ったりしてくれます。
でも、この悪気のないスケベ心のせいで敵を作ったり、溜息をつかれたり・・・最悪全てを失ってしまうこともあります。
人をいじる
テレビで芸人さんがいじられているのを見て、真似するのはやめましょう。
芸人は「いじられている」のではありません。
「いじらせている」のです。
いじる側・いじらせる側双方に、メリットがあるからやっているだけ。
彼等は笑いをとるのが仕事なので視聴者が笑って、自分達の名前と顔を覚えてくれて、カットされずに放送してもらえればいいわけです。
そんなプロの仕事を見て「自分も人をいじって笑いをとろう」はおこがましい考えです。
何より素人同士なので、双方にとって何もメリットがありません。
「自分をいじらせて笑いをとる」のはまだマシですが、あまりおすすめしません。
職場の潤滑剤として自分を笑いのネタにする・・・自分を落として笑いをとるのは、確かに誰も傷つけないし場が明るくなるかもしれません。
ただ、職場や学校には「おこがましいド素人」も大勢います。
私の知人A氏は、職場で雰囲気が暗くならないように、時々自分をネタにした冗談を言っていたそうです。
ところがおこがましい同僚が「Aさんはいじってもいい人だ」と勘違いして何かにつけて絡んでくるようになったのです。
Aさんは管理職なので、威厳やリーダーシップが必要です。
もともと「いじられキャラ」でもありません。
ところがその同僚は「いじってあげるとAさんは喜ぶ」と勝手に勘違いをして、人前で度々いじるようになったのです。
Aさんは私の占い鑑定のお客様だったので、私は「その同僚を空気として扱ってください」とアドバイスしました。
無視ってことです。
幸い、学校ではなく職場だったのですぐに解決しました
上司から空気として扱われて平気でいられる部下はいません。
それまで笑っていた部下達は「いじり」に対して誰も笑わなくなりました。
冷たい沈黙の中、いじり好きの同僚はきまりの悪い思いをして、引き下がったそうです。
相手が笑っていたとしても、メンタルが強そうだったとしても「人をいじる」という行為には何もメリットがありません。
自分に酔う
本当に話が上手で流れるように説明してくれる人もいます。
話が論理的で無駄がなく、プレゼンも大得意。
でも、このタイプの人には気をつけなければいけない落とし穴があります。
多くの人から「話上手ですね」と言われ続けた結果、
「自分は話がうまい」「自分の話は面白い」と自信をもつようになり、もっと話術を磨こうとしてしまいます。
その結果、まるで落語家や講談師のような話し方になっていく人達が多いのです。
こうなると、かえって話に説得力がなくなります。
自分の話術に酔っていることが、周囲にわかってしまうからです。
「どうだ、俺の話ってわかりやすくて上手いだろう」
という声まで聞こえてきそう。
このタイプの人には、上司でもなかなか忠告できないため
「〇〇君は話がうますぎるんだよね、完璧すぎても人の心には響かないからね」くらいしか言えません。
これで察してくれればいいのですが、たいていは「自分はトークがうますぎて上司にまで嫉妬されてるのだ」と解釈していまいます。
これでは、せっかく鍛えたトーク力が台無しです。
高度な技
これも話がうまい人にありがちです。
「あの人って、いつもズバッと言うから好き」と言われる人達は、話術がうまいだけでなく、地頭と反射神経が人並外れていいのです。
毒舌家で知られる芸能人を思いだしてみてください。
彼等は皆、「本気で人を傷つけるギリギリのところ」でやめています。
このギリギリが難しいところです。
はるか手前でやめてしまうと、別に面白くもなんともない普通の話になってしまいます。
調子にのって本当に誰かが傷つく所まで踏み込んで言ってしまうと、シャレになりません。
ギリギリのところを狙えるのは、前述の通り頭と反射神経がいいからです。
これは凡人が練習してできるものではありません。
トークに自信のある人の中には「もっと人を笑わせたい」「もっと楽しませたい」と思うあまり、舌禍事件を起こす人も大勢います。
一番わかりやすい例が吉野家の大炎上事件です。
「若い女性にもどんどん来て欲しいですね」とだけ言っておけばいいものを
「生娘をシャブ漬け戦略」として
「田舎から出てきた右も左も分からない女の子を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢ってもらえるようになれば、(牛丼は)絶対食べない」
と言ってしまった事件です。
吉野家は平謝り、本部長は解任、彼を止めなかった早稲田の教授まで批判されてしまう結果になりました。