エリザベス女王は即位70周年を前に「カミラ夫人を王妃に」という希望を表明しました。
当初はチャールズ皇太子が国王になっても、カミラには国王夫人の肩書しか与えられず王妃の称号は認めないという条件でした。
ダイアナ元妃の悲しい事故以来、カミラ夫人はイギリス王室一の嫌われ者でした。
カミラ夫人はエリザベス女王だけでなく二人の王子、王室のメンバー達の信頼を勝ち取るため、慎重にふるまい、長い時間をかけて彼等の気持ちを懐柔してきました。
カミラ王妃はどのようなイメージ戦略をとってきたのでしょう。
皇太子とカミラ夫人の関係
チャールズ皇太子とカミラ夫人の関係は、二人がまだ20代の頃に始まりました。
皇太子の花嫁選びの基準はかなり厳しいものでした。
上級貴族の家柄であることだけでなく、処女性も求められていました。
皇太子妃に多くの男性遍歴があってはいけなかったのです。
先祖からの縁
カミラ夫人、旧姓カミラ・シャンドの父親は陸軍将校からワイン商に転職して成功したビジネスマン。
母親はアシュコーム男爵ローランド・キュービットの娘にあたります。
カミラ夫人の母方の先祖であるアリス・ケッペルはエドワード7世の愛人として有名でした。
アリス・ケッペル
カミラはチャールズ皇太子に会った時「私達の先祖は愛人関係だったのよ。私達もどう?」と言ったそうです。
2人は先祖の後押し?と思うくらい強い縁で結ばれていました。
皇太子がカミラにプロポーズしなかった理由
チャールズ皇太子との結婚をあきらめたカミラは、1973年にアンドリュー・パーカー・ボウルズと結婚しました。
つきあっていたにもかかわらず、カミラは皇太子妃候補にはなれませんでした。
チャールズ皇太子も当時は、カミラとの結婚に対して煮え切らない態度をとっていたようです。
その理由の一つに、大叔父のマウントバッテン卿の存在がありました。
ルイ・マウントバッテン卿
若い頃は映画スター並みのイケメンでした。
マウントバッテン卿は、チャールズが家族の中で一番信頼し慕っていた人物です。
フィリップ殿下との関係が微妙だったチャールズ皇太子は、マウントバッテン卿を父親のように思っていたようです。
そのマウントバッテン卿は、自分の孫娘であるアマンダ・ナッチブルをチャールズと結婚させたがっていたため、カミラとの結婚に反対していたのです。
アマンダ・ナッチブル嬢。
1987年に不動産業のチャールズ・ビンセント・エリングワースと結婚しています。
チャールズとカミラに巻き込まれなくて幸運でした。
普通のカップルはどちらかが、他の相手と結婚した時点で関係は終わるのですが、チャールズとカミラは違いました。
アンドリュー・パーカー・ボウルズが、プレイボーイであったこともあり、カミラとチャールズはすぐに復縁しています。
英国王室にとっての離婚
当時の英国王室では、離婚経験者との結婚など不可能でした。
エリザベス女王の叔父エドワード8世は、アメリカ人で離婚経験者のウォリス・シンプソンとの結婚と引き換えに、王冠を捨てています。
また、エリザベス女王の妹マーガレット王女も同じく、離婚歴のあるピーター・W・タウンゼントとの結婚をあきらめています。
エリザベス女王はマーガレット王女に、王族の地位かタウンゼントとの結婚か、選ぶように告げたと言われています。
もちろん王家を選んだマーガレット王女
マーガレット王女はその選択について聞かれた時、「王族であることは、何よりも価値がある」と語っています。
当時、王家の長であるエリザベス女王が、カミラとの結婚を認めてくれる可能性はありませんでした。
それでも別れる気などないカップルの間に割り込んで、妻になってしまったダイアナはホントに災難です。
ダイアナ妃とカミラ夫人
ダイアナ元妃は21歳の時、13歳年上のチャールズ皇太子と結婚しました。
ダイアナは婚約中に、二人の関係に気づいていたと言われています。
カミラも最初は自分がダイアナを追い落として、妻の座につけるとまでは思っていなかったでしょう。
ダイアナが対応を誤らなければ、カミラは今でも国王の愛人「親しいお友達」で終わっていたはずです。
計算外だったのは、ダイアナがテレビのインタビューでチャールズとカミラの不倫を暴露してしまったことです。
これはインタビュアーがダイアナと弟のスペンサー伯爵をペテンにかけて、追い込んだ末に暴露するように説得して実現したものでした。
BBCは正式に謝罪しており、ウィリアム皇太子はこの映像を「二度と見たくない」と言っています。
このインタビューでの暴露がなければ、ダイアナの運命は大きく変わっていたはずです。
暴露があったからこそ、エリザベス女王は離婚を勧告したのです。
暴露インタビューが放送されるまでは、女王も皇太子の離婚など認めるはなかったようです。
過去に離婚経験者との結婚を望んだ、叔父(ウィンザー公)と妹(マーガレット王女)には厳しい選択を強いてきたのですから。
チャールズとダイアナの相性
もともとダイアナとチャールズは、全くといっていい程共通点のない夫婦でした。
ダイアナは相手に依存するタイプでしたが、チャールズに妻の面倒を見る気などありません。
間もなくダイアナは摂食障害におちいります。
皇太子夫妻の仲が修復できない程広がったのは、ダイアナがチャールズ皇太子より注目を浴びてしまったことです。
ダイアナはカミラに嫉妬し、チャールズは自分より注目を集める妻に嫉妬していました。
ダイアナが華やかに登場して人々の注目を独り占めする時、チャールズはおまけのように扱われていたからです。
地味なチャールズより、美しくハイブランドのドレスを着こなすダイアナの方が目立つのは仕方のない事だったかもしれません。
ダイアナも一歩下がる妻ではありませんでした。
自分が皇太子より目立つ事を彼が嫌がっていることを知りながら、ダイアナは一人での公務を増やしパーティーでも注目を集めました。
その結果、ダイアナと正反対のタイプ・・・地味で控え目(に振る舞う)カミラが、チャールズの愛情を独占しました。
その後はお互いに不倫の暴露合戦。
ダイアナ自身にも不倫関係にあった男性がいたため、本当は純粋に被害者というわけではありません。
公務の最中も二人はお互いへの嫌悪感を隠そうともせず、チャールズのスピーチの最中にダイアナは退屈そうにうんざりした顔をしてみせました。
早く終わらないかしら・・・
暴露の代償
とうとうエリザベス女王は、二人に離婚するよう言い渡しました。
この決定はチャールズとカミラだけでなく、ダイアナにとっても計算外だったようです。
ダイアナは離婚したくて暴露したのではなく、チャールズとカミラに復讐したかっただけだったといいます。
結局、ダイアナ元妃は全てを失い、カミラは全てを手に入れました。
暴露などせず、王室の掟に従ってこっそり遊べばよかったのに、ダイアナはあまりにも普通の感覚の持ち主でした。
王室ではマーガレット王女やアン王女も散々遊びまくっているし、フィリップ殿下の度重なる浮気をエリザベス女王はあっさり無視しています。
代々イギリス王室の君主は愛人をもち、王妃はそれを受け流し、嫉妬したり騒いだりはしないものでした。
チャールズ皇太子もダイアナとのケンカの最中に
「私が史上初めて愛人を持たないウェールズ公爵となることを本気で期待していたのか?」
と言い放ったといわれています。
もしダイアナがカミラの存在を無視していたら、カミラは一生愛人のまま終わったはずでした。
カミラ夫人の不人気ぶり
ダイアナ元妃の悲劇的な最期によって、カミラ夫人は世界中から憎まれてしまいました。
亡くなったことでダイアナ元妃は永遠に美しく光輝く存在になり、カミラは悪女として徹底的に嫌われ、挽回などできそうにありませんでした。
カミラ夫人の長期戦略
カミラ王妃も自身の不人気を回復させるには、長期的な戦略が必要だとわかっていたようです。
カミラの賢いところは、決してチャールズ国王の前に出ないことです。
チャールズはダイアナとの公務で、常にダイアナだけが目立つことに不満を持っていました。
カミラは皇太子時代から変わらず、チャールズ国王の一歩後ろを歩き、出しゃばらずに彼を支えました。
彼の愛情さえ盤石なら、他はどうでもいいのです。
カミラの戦略
以下はカミラ夫人が人気を回復のためにしたことです。
- チャールズ皇太子の良き妻となり彼を支える
- メディアと良好な関係を築く
- 王室内での味方を増やす
- エリザベス女王の信頼を勝ち取る
- 王子達と和解する
これは、どれもダイアナ元妃が失敗したものばかりです。(王子達以外)
カミラは長い時間をかけて、徐々に好感度を上げていきました。
そのために広報担当者や、イメージ戦略の専門家を雇ったといいます。
彼等のアドバイス通り、王室内の保守派に気に入られるよう、控え目にふるまいました。
派手な新興成金達や、映画スター達とも楽しく付き合っていたダイアナに比べて、カミラはそれとは反対に堅実で古風なイメージを持ってもらえたのです。
若くて美しかったダイアナと張り合っても勝てるはずはありません。
正反対に地味で野暮ったいイメージのまま、一歩下がってチャールズの黒子に徹しました。
それに野暮ったい服はチャールズの好みでもありました。
カミラと一緒にいる時の、本当に幸せそうな皇太子の笑顔。
ダイアナといる時には決して見られない表情でした。
笑ってもこの程度・・・
この写真に限らずカミラといる時は、いつもご機嫌で楽しそうです。
チャールズ皇太子の幸せ全開の笑顔を見ていると、不幸な結婚生活を終えたのは正解だったと誰もが思うでしょう。
王子達の態度が軟化したのも、父親の幸せそうな様子を見て納得したからかもしれません。
カミラは王子達にも気を使いつつ、常に一歩下がってチャールズ皇太子を支え、公務でも控え目にふるまいました。
ただ、当初ウィリアム王子はカミラの娘ローラと険悪だった、といいます。
ウィリアム王子は母親を追い詰めたカミラを敵対視しており、ローラは母であるカミラをかばったためです。
大人になり、カミラと和解したウィリアム王子はローラの結婚式に出席しています。
ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式には、ローラの長女エリザがブライズメイドを務めました。
左からカミラの息子トーマス、ローラ、ヘンリー王子、ウィリアム王子
表面上は何もなかったかのように振る舞う一家
強い追い風
その後カミラの人気回復作戦の、追い風になってくれる強い味方が現れました。
もちろん、このお方!
結婚前からティアラに注文をつけたり、ブライドメイドの衣装を巡ってキャサリン妃を泣かせたり。
宮殿のスタッフいじめの噂も、どうやら本当だったようです。
メーガン妃は同情をひくために、「自分は肌の色によって他の王族から差別を受けた」という告発までしています。
新婚間もない頃からメーガンがひき起こすトラブルの数々に、人々はカミラへの悪感情を忘れました。
この二人がアメリカで王室の暴露をしたり、ケンカを売ったりしてくれたおかげで、カミラ夫人は「あれよりずっとマシ」と思ってもらえたのです。
いつも皇太子の後ろに控えて、穏やかな微笑みを絶やさないカミラの好感度は上がっていきました。
メーガンのしたたかさに比べたらカミラ夫人なんて、まだまだ常識の範囲内。
突出して嫌われてくれる二人がいたおかげで、カミラは「家族をまとめようと尽力した」という記事まで書いてもらえました。
イメージ戦略の成功
キャサリン妃と対立しかけた時も、カミラは表だって騒がずにやりすごしました。
キャサリン妃は何かにつけて、ダイアナ元妃とよく似たドレスを選んでオマージュを捧げたり、「子育ては全てダイアナ流にやる」と公言して、人々にダイアナの存在を思いおこさせています。
カミラと相性は悪そうですが、二人共表面上は普通にふるまっています。
そんなことより、キャサリン妃とメーガン妃、ウィリアム王子とヘンリー王子の不仲の方が深刻でした。
ヘンリー王子とメーガン妃がカミラに代わって嫌われ者になってくれたおかげで、カミラの株は急上昇。
カミラはキャサリン妃とうまくやることで、王室内の結束の強さをアピールすることができました。
女王に認められる
エリザベス女王もこれといった瑕疵もなく、何より一歩下がってチャールズを支えてくれるカミラを認める気になったようです。
女王は王室の掟を破ってスキャンダルを暴露し、自分に反抗したダイアナ元妃に対しては、かなり悪感情を持っていたようですが、カミラを好いていたわけでもありませんでした。
カミラの事を「性悪だ」と言っていたとも言われています。
王家の集まりは カミラにとって針のムシロだったはずですが、カミラは忍耐強く彼等
の気持ちを懐柔していきました。
賢いカミラは、王家の序列やしきたりに従い、溶け込む努力を怠りませんでした。
その結果、エリザべス女王から「カミラを王妃に」という、お言葉をいただけたのです。
長い時間はかかりましたが、カミラのイメージ戦略は成功したようです。
エリザベス女王は自身の母親のティアラをカミラに貸与しています。
今後ヘンリー王子とメーガン妃は、暴露本にカミラの悪口を書くのではないかという話がありますが、賢いカミラは穏やかな表情でうけ流すでしょう。
私達が見習うべきなのは、心の中では冷静に計算しつつ、穏やかな表情で目的を達成する老獪さかもしれません。