誰しも玉の輿には憧れるものですよね。
でも玉の輿に乗るのはどんな女性なのでしょう?
若くて美しいくて運のいい女性?
もちろん、それも合っています。
でも、玉の輿にのった後も人生は続きます。
若さと美貌が消えた後も夫の愛をつなぎとめるには、どうすればいいのでしょう。
そもそも世界的な大富豪を射止めるのは、どんな女性なのでしょう。
世界一の玉の輿に乗った人
世界一の玉の輿といえば、ナディーヌ・ロスチャイルド夫人です。
ナディーヌは貧しい家庭の出身で、義務教育が終わってすぐに家を飛び出します。
父親の名前は不明で、身分に厳しいヨーロッパの上流社会に入り込める要素は、全くありませんでした。
ナディーヌが平凡な女の子なら、同じような階級の出身で、一番誠実そうな若者と一緒になったかもしれません。
ナディーヌも最初から、野心家だったわけでもなさそうです。
色んな仕事を転々とした後、画家のモデルになったことが大出世の糸口になりました。
そのアトリエで、ナディーヌは教養を身に着ける意義と術を学んだのです。
画家のアトリエに来る人達は皆、エレガントで教養のある人達でした。
彼等は、若くて無防備で無知だったナディーヌに、マナーや社交、教養を授けてくれました。
そこでナディーヌが身に着けた習慣がコチラです。
- わからないことは、すぐに相手に質問するか、自分で調べる。
- そのことは必ずメモしておく
- 上手に相槌をうつ(聞き上手になる)
これらの習慣は、ナディーヌが人生を切り開いていく上で大いに役立ちました。
義務教育しか受けていないナディーヌは、およそ教養などなかったのですが、「知らない事をそのままにしない」という癖をつけたことで、知識や教養を身に着けていきます。
画家のアトリエで得た教養と向上心は、「自分はどんな人生を送りたいのか?」について考えるきっかけを与えてくれました。
ナディーヌの答えは「贅沢で豪奢な生活を手に入れて、エレガントな人達に囲まれてすごしたい」というものでした。
それが彼女の人生の目的になりました。
ナディーヌは舞台女優として、パリの裏社交界に出入りするようになりました。
裏社交界というのは、日本でいう所のクラブのような場所です。
ナディーヌはあまり売れていない女優でしたが、上流の男性が集まるパーティーに顔を出すようになりました。
野心を胸に秘めたナディーヌは、同じ様に玉の輿を狙う女友達と行動を共にして、お互いに切磋琢磨したそうです。
若い頃のナディーヌ
ナディーヌはいわゆるファニーフェイスで美女ではありませんが、なぜか人を引き付ける魅力がありました。
溌剌とした雰囲気と明るい笑顔、才気煥発な受け答えは多くの貴族や大富豪達を魅了したのです。
彼女が書いた本を読むと、地頭が良くて勤勉な努力家であることがわかります。出会った頃、ロスチャイルド男爵には妻がいましたが、夫婦仲は悪く離婚しています。
世界でも有数の大富豪であるロスチャイルド家なら、どんな高貴な美女でも手に入ったはずですが、最終的に選ばれたのはナディーヌでした。
彼女が選ばれた理由
若くて魅力的な女性達の多くが愛人のまま終わるのに対し、ナディーヌはロスチャイルド男爵の妻の座を手に入れました。
ナディーヌ自身は、その理由を「私達は二人とも働き者で人生に対する姿勢が似ていました」と書いています。
人生を果敢に切り開いていくナディーヌは、ロスチャイルド男爵が会ったことのないタイプの女性だったのでしょう。
男爵の周りにはナディーヌより美しい名門の女性が大勢いたのですが、彼女達を蹴散らすくらいの魅力が彼女にはあったのです。
そして、これも大事なことなのですが、ナディーヌは「男爵の跡取り息子を出産する」という快挙を成し遂げました。
これは今まで大勢いた愛人達や妻にはできなかったことです。
「妊娠中は一歩もベッドから出なかった」とナディーヌ言っています。
万が一にも流産しないよう、細心の注意をはらって妊娠期間を過ごしたそうです。
ナディーヌの魅力
ナディーヌは跡取り息子を生んだだけでなく、男爵の人生にとって最高の相棒、理解者であり続けました。
ナディーヌが「人生に対して男爵と同じ熱量を持っていた」という事が、男爵にとっては一番大きな魅力だったに違いありません。
ロスチャイルド男爵は普通の・・・平凡なお金持ちではありませんでした。
明け方や深夜に突然起き出して、海外の別荘に行くと言いだしたり、休む間もなく世界中を飛び回る人でした。
普通、そんな時間に起き出して「さあ!出かけるぞ」なんて言われたら、たいていの女性は断るか、思い直すように説得するでしょう。
どちらにせよ、「OK!すぐに荷造りさせるわ」とは言いません。
ナディーヌは男爵が思いついたことに、決してNOとは言わず男爵のライフスタイルを共に楽しむことができました。
我慢して男爵に付き合ったのではなく、ナディーヌも(奇跡的に)同じタイプだったので、それを共に楽しむことができたのです。
並外れた熱量を持つ男性にとって、同じように人生を生きる女性に出会えたのは幸運に思えたのでしょう。
ナディーヌの性格
ナディーヌは、男爵のご機嫌を取るだけの従順な女性ではありませんでした。
「彼女は他の女性とは違う」と男爵を納得させる、何かを持っていました。
ナディーヌ・ロスチャイルドの本を読んで感じたのは、「エレガンス」と「ガッツ」です。
エレガントな女性なら大勢いたと思います。
ガッツのある女性も。
でもエレガンスとガッツを両方バランス良く併せ持つ持つ女性は、めったにいません。
ナディーヌには転んでも、顔色一つ変えずに自分で起き上がるガッツがありました。
若い頃から自分一人の力で、人生を切り開いてきた経験によるものもあったでしょう。
例えば、ナディーヌは結婚後すぐに「パーティーを開くように」と男爵に言われます。
誰を招待するか、どんな趣向をこらすか、食事やワイン、花、席順など全て一人で采配をふるうわけです。
最初のパーティーは大失敗でした。
招待客が誰も来なかったのです。
ロスチャイルド家のパーティーの招待状は、羊皮紙に書かれたものが届られていました。
ナディーヌは知らずに、紙の招待状を出したため「ロスチャイルド家の招待状がこんな紙で来るはずない」と悪戯扱いされて、誰も本物だと思わなかったのでした。
もしかしたら、自分達とは違う階級から男爵夫人に成り上がった新参者への、冷ややかな挨拶だったのかもしれません。
男爵はそうなることが、わかっていたのに、あえて何も教えずにナディーヌに全てを任せました。
なんかすごいスパルタ・・・と思ってしまいますが、それはやっぱり私が凡人だからでしょう。
ナディーヌは「どうして教えてくれなかったのよ!」「誰も教えてくれないなんてひどい!」と泣くこともできたのに、すぐに立ち上がり、次回は完璧なパーティーをやってのけます。
上流階級の習慣になじみ、ふさわしい服装や会話、立ち居振舞いを身に着けるのは、並大抵のことではなかったはずです。
彼女のサクセスストーリーが多くの女性の心に響くのは、それが若さと美貌だけによるものではなく、教養や美意識、ビジネスの才覚を学んだ地道な努力に裏打ちされたものであるからです。
泣き言も言わずにやってのけたナディーヌは、やはり玉の輿を射止めるにふさわしい女性です。
妻に求められるもの
ロスチャイルド男爵の妻に求められるのは、相棒としての役割だけではありません。
パーティーの件でもわかるようにロスチャイルド夫人には、ちょっとしたホテルの支配人並みの有能さが必要です。
大勢いる使用人たちを仕切って、軍隊のように統率して歴史のある大邸宅や美術品を維持し、招待客を楽しませる趣向を考える・・・
使用人達も、元をただせば自分達と同じ階級(下かもしれない)の出身であるナディーヌに、最初から素直に従ったとは思えません。
歴史や美術についても知識がなければ、すぐになめられたことでしょう。
さらに自分自身に磨きをかけて「どこに出しても恥ずかしくない妻」であり続けなければならないのです。
多分、上流社会はシビアで意地悪だったことでしょう。
自分達とは明らかに出自の違う女性が、入ってきたわけですから、色んな罠や陰口、陥れがあったに違いありません。
でもナディーヌくらい賢くて強ければ、自分で跳ね返して彼等の尊敬を勝ち取ることができたはずです。
いちいち夫に泣きついて愚痴を言ったりしない強さも、ナディーヌの魅力の一つです。
玉の輿に乗る前にやっていたこと
ナディーヌは売れない女優時代の楽屋で、ある本を見つけました。
他の女優の忘れ物だったようですが、この本がナディーヌの人生を変えてくれたのです。
その本は「ルイーズ・ダルク侯爵夫人のマナーブック」。
それまで漠然と豪邸や贅沢に憧れていたナディーヌは、この本を熟読し暗記します。
これもナディーヌの賢い所です。
凡俗な女性なら自分の美貌に磨きをかけて男性のご機嫌を取るだけで、マナーをなおざりにしていたかもしれません。
それから10年後、男爵の母親から食事に招待されたナディーヌは、それがテストであることがわかっていました。
侯爵夫人のマナーブックのおかげで、ナディーヌは厳しいテストにパスして、男爵の家族に認めてもらうことができました。
食事中、何かふさわしくない行いがあれば、男爵の母親は結婚を認めてくれなかったかもしれません。
繰り返し読んだマナーブックのおかげで、ナディーヌは「社交界に出しても恥ずかしくない女性」として認めてもらえたのでしょう。
幸せな結婚生活の秘訣
ナディーヌは賢くて有能でプロフェッショナルな妻です。
もし、裕福で教育熱心な家庭に生まれていれば、いい大学に行って政治家や弁護士にでもなっていたかもしれません。
ナディーヌの賢さ
ナディーヌは夫第一主義で、自身のことより男爵を幸せにすることを使命にしています。
これもナディーヌの賢いところです。
玉の輿に乗っても、時間がたつにつれて夫に与えてもらったものを、自分の権利のように思い出す妻は大勢います。
ナディーヌは、「男爵あっての自分」であることを、肝に銘じていたのではないでしょうか。
これはただのご機嫌取りではありません。
自分の力で築いた富でも立場でもない事を念頭に置いて行動することは、夫の愛をつなぎとめる上で大事です。
有能な妻
世界でも有数の大富豪であるロスチャイルド男爵家を、統率して切り盛りしていくだけでも大変な仕事ですが、ナディーヌは男爵が「帰ってきたくなる場所」であり続けることによって、妻の座を盤石のものにしました。
男爵の心を捕らえ、本宅と沢山ある別荘のインテリアを決めて、パーティーを企画する・・・
知識とセンス、教養、勤勉、賢さがなければ、とてもできないことです。
ダウントンアビーの長女が屋敷の管理だけでも大変そうだったのを思いだすと、ナディーヌの有能さがわかります。
大勢いる使用人になめられないように統率していくだけでも、大変だったはずです。
ナディーヌは「数時間、男性を楽しませるだけの若い女性なんて怖くない」と言っています。
貴族の家に生まれていても、男爵と同じ熱量で生きて、沢山ある屋敷やワイン、美術品、使用人を管理しつつ、涼しい顔で社交生活をつつがなく送る女性なんて、あまりいそうにありません。
玉の輿にのった女性が、生涯幸せに生きる秘訣は、夫にとって唯一無二の存在になることです。
それは、しばしば若くて野心家の女性にとって代わられるものです。
規格外の大物を手に入れたナディーヌの場合、優しい妻であるだけでなく、共に人生を切り開いていく相棒であり、親友、有能なビジネスパートナーでもある必要がありました。
若くて美しいだけでは勤まりそうにありません。